加登屋本館

本館

登録有形文化財(建造物)登録番号:09-0221
加登屋旅館本館は、大正8年(1919年)に建てられたと伝えられています。写真資料によると、当初は道路に面した吹き放し廊下でしたが、その後、1952年から1961年までの間に、欄干付きの建具が取り付けられた窓に改装されました。
この建物は木造の3階建てで、1階の南東側には2間の間口に屋号が入った4枚引違いの硝子戸を備えた玄関があります。玄関を入ると、右手には帳場、正面には応接室があります。また、北東角には旧玄関と同じく旧帳場が残っています。厨房は西側の中央に配置されています。
内部に関しては、3階部分にかつての状態が保存され、西側には階段と廊下、東側にも廊下があります。間口1間半、奥行き2間で、襖で仕切られた6畳の客室が5室並んでいます。これらの客室は、かつての湯治場の客室の雰囲気をよく伝えています。2階でも、内装や界壁は改装されていますが、3階と同じく6畳の客室が5室連なっています。
外観では、欄干の付いた窓など、かつての湯治場の温泉宿の特徴が良く残っています。この本館は、別館や悠仙閣と繋がり、温泉街の歴史的な景観を形成する貴重な建造物です。旧玄関には、貴重な本業タイルが残されている他、電話室のドアもそのまま残されています。
別館

登録有形文化財(建造物)登録番号:09-0222
加登屋旅館別館は、大正時代後半から昭和初期に建てられたと推定されます。昭和48年(1973年)に本館と悠仙閣と繋げて使われるようになりました。この建物は、本館と悠仙閣に挟まれた位置に建っています。
建物は木造の3階建てで、寄棟造りで屋根は鉄板瓦棒葺きです。現在では、本館や悠仙閣から内部廊下を通ってしか入ることができません。1階には10畳の客室があり、2階にはそれぞれ4畳、4.5畳、6畳の客室があります。現在は使われていない3階部分には、かつての姿が保存されています。廊下が10畳の客室の周りを囲んでおり、西側の広縁には階段跡が残っています。
さらに、3階の一部には上げ下げ窓が残っており、窓枠にペンキの痕跡や東側の出窓上部にはドイツ壁が残っています。これらの特徴から、この建物は大正から昭和にかけての洋館のデザインを取り入れたものと考えられます。この建築物は、時代の特徴を示す重要な建造物として高い価値があります。3階の客室には、珍しい形状の海老束があり、廊下の角には扇張りの竿縁天井があります。これらの要素から、当時の旅館建築の精巧なデザインが窺えます。
悠仙閣

登録有形文化財(建造物)登録番号:09-0223
加登屋旅館悠仙閣は、昭和27年(1952年)に築かれた建物です。木造の2階建て建物は、桁行き8.787メートル、奥行き8.029メートルで、切妻造の屋根を持ち、鉄板瓦棒葺、道路に面した平部分には軒破風があり、正面玄関上の庇も入母屋破風の意匠が施されています。
外壁は腰部洗い出しで、漆喰塗りとなっています。また、各客室の下地窓が際立つデザインです。1階には北側に位置する本館と同様、2間の間口に屋号が入った4枚引違いの硝子戸を備えた玄関、6畳の板の間取りの客室、西側の湯川に面した大小の浴室があります。2階には中央西寄りの階段を取り囲むように4.5畳、6畳、8畳、10畳の客室があります。
建物内部では、銘木が贅沢に使われており、玄関や各客室の入口には美しい化粧庇が設けられています。加えて、大正時代の湯治客が自炊したり、昭和初期の洋館建築の意匠を取り入れた別館もあります。そして、戦後に建てられた悠仙閣は、温泉街の通りに対して洒脱な印象を醸し出しています。
加登屋旅館
